【中国の視点】性風俗産業のドンは「全人代代表」、歪んだ産業構造転換に警鐘
中国当局は旧正月連休明けから性風俗産業が盛んな広東省東莞市で過去最大規模といわれる売春摘発を実施した。約6000人の警察が動員され、数百人が拘束されたと報じられた。今回の摘発で同産業の影のボスといわれている「太子酒店」の梁耀輝代表(全国人民代表大会の元代表)も明るみになり、国内外で物議を醸している。
東莞市は1997年から2008年の世界同時不況が発生するまではIT機器・電子部品の加工地として名を知られていた。10数年前には風俗産業が存在していたものの、隠れた存在だった。
一方、現在の東莞市では、風俗産業が主要産業の一角まで変身し、小売りやホテル、タクシー業界など関連産業を含めて約20万人以上が関わっているといわれている。今回の取締り強化で約20万人が失業に追い込まれるとも試算されている。
風俗産業はここまで拡大した背景には従来の加工業の衰退が主因だと分析されている。世界同時不況の発生に伴い、外需の急減で多くの中小企業が倒産に追い込まれたほか、ハイテク産業の育成遅れも一因だと分析された。また、地元政府はハイテク産業の育成やサービス業などへの転換を試みたが、大きな成果を挙げられなかったことも風俗産業の拡大要因だと指摘された。
東莞市は香港やマカオなどに近いという有利な地理的要因で本土以外の顧客を獲得しやすいという側面があるほか、風俗産業の拡大に伴う納税額の増加で地元政府も暗黙に認可していると批判された。東莞市における産業構造の転換失敗は中国で氷山の一角だと指摘され、投資や輸出などに依存するこれまでの成長パターンの転換はこれからが正念場だといわれている。
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正直、今までこれほど東莞の風俗産業について取り上げられたことがあったでしょうか。
日本でも、夕方のニュースで報道していましたからね。
やはり、それだけインパクトの大きいものであるんでしょう。
一連のニュースを見ても、第一報であるCCTVの「東莞の現状」特集のニュースから始まり、
その後は、ガサ入れの事実を報じたニュース、ガサ入れによって、逮捕者と香港人が
大量に香港に逃げ帰る”ビックデータ”を報じたニュース、そして現在では、東莞の取り締まりの
背景にある中国の社会問題についてまで、言及されています。
今までの東莞の流れを整理したいと思います。
①東莞は、深圳と広州に挟まれた珠江デルタに位置している。
そうした地理的特性から、香港・台湾を始めとする工場の立地が90年代より相次いだ。
②香港・台湾系の工場だけでなく、世界中のメーカーの生産委託工場林立により、
多くの工場労働者が中国全土より東莞に集まった。
③工場発展により、ホテルやサービス産業などの、副次的なサービスも発展した。
④世界でも有数の労働集約型工場の林立は、多くの労働者雇用を生み、
やがて豊富な労働者は工場労働者としてだけではなく、
サービス産業労働者としても従事するようになった。
⑤香港やマカオ、経済特区の深圳や省都の広州に近いことから、
多くの人の出入りがあり、やがてサービス産業は、そのメインが夜の産業となった。
⑥労働集約型の工場地域、それに伴ったサービス産業地域として、東莞は発展を遂げた。
⑦夜の産業は中国では違法だが、経済発展を優先させる結果(または賄賂があるので)
であれば、それも仕方ないとのことで、長期間、当局により黙認されてきた。
⑧その結果、風俗産業及びその関連従事者は数十万人(二十万~六十万人)になり、
東莞市GDPの7分の1、数千億円を占めることになった。
ここまでが従来の流れです。
そして、今回の摘発に至ったわけですが、順調に経済発展すれば、
いずれかこうなることは予測されてました。
しかし、何故今なのだろうというところが、正直なところです。
上の記事にありますように、東莞は生産委託工場、労働集約型産業という特性上、
世界の景気に特に影響を受けやすく、2008年のリーマンショック以降は、
その産業の特性上、多くの人の目には衰退に映ったようです。
例えば、加藤嘉一氏の著書、「いま中国人は何を考えているのか」の第五章では、
”「世界の工場」からの脱却を試みる動き~中国で一番物価の高い街、東莞を歩く~”
において、東莞について工場が衰退し、やがて風俗都市になりゆく一面について言及しています。
その他、中国ジャーナリスト宮崎正弘氏、富坂 聰氏においても、同じ様な切り口です。
「中国は世界の工場となった。けれども、労働集約型生産委託の工場では、
いわゆる世界のメーカーの下請けであり、今後の大きな発展は望めない。
労働集約型から脱して知的集約型、開発やハイテク部門にその舵を切るべきだ。
最も東莞だけでなく、これは中国全土の課題であるが。」
ということですが、残念ながら、東莞は従来モデルを踏襲したままで、
試行錯誤は繰り返しているものの、知的集約型に移行できず、現状たじろいでいる状態です。
そんな綱渡りの状態の中、一大産業である風俗産業を潰すなんて、命取りにしか思えません。
背景には、警察や地元政府幹部の汚職、それに対しての人民の不満はあったでしょう。
けれども、東莞市のGDP7分の1の産業が失われ、メディアの報道によると20万人の失業者
が出るですから、その方が一般人民にとっては、よほど大変なことではないかと思います。
東莞だけではない、今や広東省内での取り締まりですから、
失業者の数と失われるGDPはかなりのものになるでしょう。
知的集約型労働に移行し、経済発展も順調に進んでいる最中なら分かります。
深圳のように、高度なサービス業(金融等)に順調に発展する中で、
夜遊びが潰される事情であれば、分かります。
しつこいようですが、世界経済の見通しも完全に明るいわけではなく、
足元の産業にしても、従来モデルの踏襲に留まり、新たな段階へは移行できていない。
そんな中での取り締まりです。
風俗撲滅の裏側に腐敗撲滅があることは分かります。
ですけれども、そんな綺麗事ばかりは言ってられないのでは・・・と思います。
まさにそれは「中国の覚悟と自信」、なのでしょうか・・・。
本気で腐敗を潰し、良き経済発展へと導く痛みを伴う改革なんでしょうか・・・。
私には、時期が早すぎると思うし、無謀ではないかなと思うんですが。
それは、数年後の歴史が証明してくれるでしょう。
中国の為にも、夜の早期復活の為にも、そして捕まらない為にも、
大陸での夜遊びは控えたほうが良さそうです。
また続報があったら書きます!!
尚、私のポンコツ記事よりも深く鋭く考察されている
→華のくらし 様の東莞記事も御覧くださいませ。
より理解が深まると思います。
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